渡良瀬遊水地を自転車で走る:平坦な湿地の周回と歴史

栃木県の南端、栃木市・小山市と群馬・埼玉・茨城の各県が接するあたりに、広大な湿地が広がっています。渡良瀬遊水地です。起伏がほとんどなく、見渡す限りのヨシ原と空が続くこの場所は、初心者からトレーニング中のレーサーまで、多くのサイクリストに親しまれています。2018年に県内で開かれた国際ステージレースでは、初日の個人タイムトライアルの舞台にもなりました。
遊水地内の道路や施設の利用条件は、管理者によって定められ、工事や増水、ヨシ焼きなどで変わることがあります。出かける前に国土交通省の管理事務所や周辺自治体の最新情報を確認してください。
どんな場所か
渡良瀬遊水地は、洪水のときに川の水を一時的にためて下流の被害を軽くするための施設(遊水地)です。渡良瀬川、思川、巴波川(うずまがわ)が合流する低地に位置し、面積は約33平方キロメートルに及びます。栃木・群馬・埼玉・茨城の4県にまたがり、本州最大級のヨシ原が広がる湿地として、多様な野鳥や植物の生息地になっています。2012年にはラムサール条約湿地に登録されました(Wikipedia「渡良瀬遊水地」)。
遊水地の中心には、上空から見るとハートのような形をした谷中湖(渡良瀬貯水池)があります。湖の周囲や堤防の上には道路が通り、自転車で走りやすい環境が整っています。
自転車で走る魅力
- 平坦:勾配がほとんどないため、一定のペースで長く走る練習や、はじめての長距離サイクリングに向いています。
- 見通しのよさ:視界を遮るものが少なく、季節や時間帯によって表情の変わる空とヨシ原の景色を楽しめます。
- 周回しやすい:谷中湖の周りを回るコースは距離を調整しやすく、自分の体力に合わせて周回数を決められます。
2018年のステージレースでは、谷中湖の「北ブロック」と「谷中ブロック」を使った周回コースで7.2kmの個人タイムトライアルが行われ、同じ日に一般参加のタイムトライアルも実施されました(タイムトライアルの解説、コースの記録)。
注意したいこと
風
平坦で遮るもののない遊水地では、風がもっとも大きな負荷になります。特に冬から春にかけて強い北西の季節風が吹く日は、向かい風の区間で速度が大きく落ちます。往路が追い風だと帰りに苦労するので、風向きを確認してからルートを決めましょう。
春のヨシ焼き
渡良瀬遊水地では、例年3月ごろにヨシ原を焼く「ヨシ焼き」が行われます。ヨシの新芽の生育を助け、湿地の環境を保つとともに、害虫の駆除や火災の予防などを目的とした行事です。実施日には遊水地内への立ち入りや周辺道路の通行が規制され、煙や灰が周辺に広がることもあります。日程は天候によって変わるため、関係自治体の発表を確認してください。
増水と閉鎖
遊水地は本来、洪水を受け止めるための施設です。大雨のあとや台風の時期には、遊水地内の道路が冠水したり、立ち入りが制限されたりすることがあります。雨が続いたあとは無理に入らないようにしましょう。
夏の暑さと日差し
日陰がほとんどないため、夏は日差しと暑さが厳しくなります。水分と塩分を多めに用意し、日中の暑い時間帯を避けるのが賢明です。
ほかの利用者への配慮
遊水地は、散策、バードウォッチング、釣り、ジョギングなど、さまざまな人が利用する場所です。歩行者の近くでは速度を落とし、追い越すときは声をかけるなど、思いやりのある走り方を心がけてください。野鳥の観察や撮影をしている人のそばでは、静かに通過しましょう。湿地の植物や生き物を傷つけないよう、指定された道以外には入らないことも大切です。
遊水地の歴史
渡良瀬遊水地の成り立ちは、明治時代の足尾鉱毒事件と深く結びついています。上流の足尾銅山から流れ出た鉱毒が渡良瀬川流域の農地に被害をもたらし、地元選出の衆議院議員だった田中正造が被害の救済を訴えたことはよく知られています。その後、洪水と鉱毒の対策として遊水地を設ける計画が進められ、その区域にあった谷中村は廃村となりました。
遊水地の中には旧谷中村の跡地が残されており、当時をしのぶことができます。サイクリングの途中に立ち寄り、この場所がどのような経緯で現在の姿になったのかを知ることで、平らな湿地の風景の見え方も変わってくるはずです。周辺には遊水地の自然や歴史を紹介する資料館などの施設もあります。
アクセス
遊水地の周辺には、東武日光線の板倉東洋大前駅や柳生駅、JR宇都宮線・東武日光線の栗橋駅、JR宇都宮線の古河駅などがあります。駅から遊水地までは自転車で移動できるため、電車で自転車を運ぶ「輪行」で訪れるのも便利です(輪行の基本)。車で訪れる場合は、遊水地周辺の駐車場を利用し、駐車場の開放時間も確認しておきましょう。
周辺と組み合わせる
遊水地から北へ向かえば、蔵の街並みで知られる栃木市の中心部や、思川沿いの小山市へ足を延ばせます。平坦な道が多い県南部は、遊水地を起点にしたロングライドの計画も立てやすいエリアです。県内のほかのエリアとの違いを知りたい場合は、那須高原や日光いろは坂の記事も参考にしてください。


